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前立腺がんは放置しよう❗近藤誠理論は大正解??ってワケないぞ❗

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日本人の寿命が長くなればなるほど、がんが死亡原因となる方が増えているのは常識です。

がん死を少なくするために、国が行なっている方策が「がん検診」。このがん検診なんて受ける必要は全くなし❗死亡を早めるだけ、とあまのじゃく的な主張で売り出したのが、例の近藤誠先生です。

「前立腺がんは放置が正解」って半可通が言い出すことを予想

近藤誠理論信奉者が泣いて喜ぶような論文が先日発表されました。近いうちにこの論文を目にした医療評論家とかが、無責任なジャーナリストが孫引きを重ねて主張するでしょうね⋯前立腺がんは発見されても、放置しておくのが一番だよ❗って。

でもね〜、それってかなーり早とちりなんです。さらに近藤誠理論が間違っていることさえ示しているのですよ。その論文は「10-Year Outcomes after Monitoring, Surgery, or Radiotherapy for Localized Prostate Cancer」(N Engl J Med. 2016 Oct 13;375 (15) :1415-1424.)で、限局している前立腺がんを放置した場合・手術した場合・放射線治療をした場合、10年後にどうなっているのか?を調べたものです。

前立腺がんは治療しても、しなくても死亡率に変わりはないじゃん⁉

この医学論文は「New England Journal of Medicine」という非常に権威のある医学専門誌に掲載されているので、時間とともにメディアが取り上げることが、大いに予想されます。しかし、一般の方は抄録しか読まないでしょうから(全文読むにはWeb上であっても有料)、メディアが取り上げた一部だけを知識として吸収してしまいます。確かにこの論文では50歳から69歳の男性のPSA (前立腺がん特異抗原)という血液検査でわかるがんのマーカーを調べて、前立腺がんが発見された1643人を手術をする人、放射線治療をする人、放置する人の3つのグループに分けて10年間の予後をフォローアップしています。

その結果

前立腺がんは治療しようが、しまいが死亡率には有意差がなかった

との結論に達しています。その詳細は前立腺がんと診断され、前立腺がんが原因で死亡した人は17人。放置(実際は監視療法という手段で、全く無視していたわけではない)したグループで8人、手術をしたグループで5人、放射線治療を受けたグループで4人⋯無治療の方がやっぱり、死亡しているじゃん、と一瞬思えますが、統計学的には3グループでは死亡率には有意差が無いと判断されます。

しかし、この結果だけを知識として取り込んじゃうと大変なことになりますよ⋯がんの転移には大きな差があるんです、放置しちゃった場合は。

近藤誠先生の面白すぎることを詳しく知りたい方はこれをご参考ください。ミイラでも骨転移が発見されています。 ニセ医学❗近藤誠医師の「がん放置療法」は放置しましょう❗その2 エジプトのミイラはがん転移が少ない理由は発がん率が低かったから⁉

前立腺がんはもともとゆっくり進行するガンであり、転移することが大問題なんだよ❗

前立腺がんは特徴のあるがんなんです。

  • PSAという血液検査で他のがんと比較して、高い精度でがんを早期発見できます。
  • 前立腺がんは病状が進行する速度が非常に緩慢でゆっくり、ゆっくり体を蝕んでいきます。
  • 前立腺がんで死亡する最大の原因は遠隔転移です
  • 前立腺がんが転移する場所の80パーセント以上は骨転移です。
  • 前立腺がんで亡くなる方の大問題は疼痛対策です。

今回の論文の表の赤線で囲った部分に注目してください❗

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http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1606220#t=articleTop

転移した人は無治療グループで33人、手術したグループで13人、放射線治療をしたグループで16人となっています。がんが転移しているのは、何にも治療しない監視グループにおいて有意に多いことがわかります。

前立腺がんが生死に関わるのは遠隔転移であり、骨への転移はQOLを非常に低下させるということが大問題と言い切れます。

前立腺がん自体が前立腺に限局している場合、これが単独の原因となって死亡することは稀です。前立腺の周囲に広がっている場合は「局所進行がん」と呼ばれ、手術や放射線治療では完治は難しいと考えられています。さらに、骨転移(80パーセント程度)、リンパ節転移(40パーセント程度)が発見されるとホルモン療法以外に効果的な治療方法は現時点では明確になっていません。他のがんと比較しても、前立腺がんは骨への転移が早期の起きていると考えられています。

前立腺がんが進行して苦しい結末を迎えないためには⋯やっぱり、積極的な治療でしょ❗

前立腺がんが発見されても、早期かつ転移がなく、悪性度(グリーソン・スコア)が低い時には、PSA監視療法という方法が日本でも積極的に行われています。これは近藤誠先生のおっしゃるような「放置する」のではなく、定期的にPSAを検査して、急激に上昇する場合はCT,MRI,そして骨への転移がないかを精査します。つまり、PSAが高値で前立腺がんが発見されたら、何でもかんでも手術しちゃえ、放射線治療しちゃえとの選択肢では無いのです(恥ずかしながら、10数年前は手術していました)。

前立腺がんの治療法?の一つとして、近藤誠先生の唱える「がんは放置しろ」「がんの手術なんてトンデモ無い」を今回取り上げた医学論文で補強する輩の出現を予想して、こんなブログを書きました。前立腺がんが発見された時点の病期やがん細胞の悪性度によって、選択肢は様々であり「ほっとけ療法」は死を迎えるまでの生活の質を考えた場合、ベストな選択ではありません。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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