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これからのがん治療は4次元ピンポイント放射線❗ってワケないじゃん。

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普通のがん治療を標準医療あるいはガイドラインに則った治療と呼びます。標準医療に変わる民間療法的なものを代替医療とか補完医療と呼びます。

代替医療原理主義者の中には標準医療を目の敵にする方も多いのですが、エビデンスがお客様の感想レベルであるのが弱点。また、西洋医学を全否定する自然派を拗らせてしまった医師も困り者です。しかし、世の中は不思議なもので、西洋医学を利用しながらどう見ても標準医療とは思えない治療を行なっている医師もいて厄介です。

がん治療に放射線療法は効果的、でもこの治療法はどうなのよ?

例えば4次元ピンポイント放射線治療でがんを治療するはなぜか芸能人の方々の間で有名ながん治療法らしいです。医師ってどうしても世の中の動きに疎いことが多いので、私は積極的に週刊誌の類も目を通していますが、女性誌は盲点でした❗

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http://www.news-postseven.com/archives/20160714_430129.html?PAGE=2より(これ2ページ目でした)

休診日に「神の数式」というDVDを見ながら「超弦理論って10次元なんだあ」と思いつつ、手元のPCをいじっていたら、上記の「九重親方実践のがん治療法『四次元ピンポイント照射』とは」って記事を見つけちゃったのです、なんてシンクロニシティなのでしょうか(ちなみにシンクロニシティはオカルトというか、超常現象の一つで私は結構好きです)。

まずは女性セブンのがん治療法「四次元ピンポイント照射」をご紹介しますね

えーっと、私のブログって女性心理が分かっていないとのご指摘を再三受けて、どうにか女性ファンを獲得しようと試みているのですが、ことごとく失敗に終わっています、多分。女性誌に目を通さない(だってファッション誌なんて重すぎて寝ながらじゃ支えきれません)ことが大きな原因なのかもしれません。

今回はブログを読んでいただいている方と情報を共有するために、一次ソースを女性セブンのオンライン版とさせていただき話を進めます。

「UMSにある放射線治療装置『スーパー・フォーカル・ユニット』は、植松さんらのグループが放射線治療装置とX線、CTスキャンなどを組み合わせて作ったもので、日本に1台しかありません。『サイバーナイフ』という同じような四次元装置もありますが、コンパクトなため線量に限界があり、大きさが4~5cm以上のがん細胞には難しい。その点、UMSの装置は強い照射も可能なので、大きながん細胞でも治療が可能。そんな優れた装置がなぜ日本に1台しかないかといえば、値段が高くなるのでメーカーが作らないからです」

前掲サイトより ここで標準医療を治療の基本とする医師は疑問を持っちゃうんですねえ。まず

独自のネーミングによる治療法はほとんどの場合が怪しい

さらに疑似科学というかSF小説や映画に出てくる

現実の世界に4次元を持ち出すことが怪しい

さらにさらに

メーカーが作らないから高額、じゃあ誰が作ったの?

との素朴な疑問も出てくるのです。これらの理由を説明すると

●独自のネーミングの治療法は学会では使用しないように一般的には言われている

●4次元との考え方は数学・物理学の世界ではあるが3次元を超えた次元は医学では使用しない

●医療機器を勝手に改造することはPL法等の問題によりやってはいけないし、万が一の責任は誰が取るのか?

と普通の医師なら考えるはずです。標準医療とは残念ながら捉えられていない美容医療の世界でも4次元と医療機器の改造はしないと思います。まあ、治療法のネーミングは時々見かけますけどね(笑)。

がんに対して実際に4次元ピンポイント治療を行なっている医療機関のサイトを覗いてみると⋯

女性セブンの記事にある「UMS」とは1ページ目に書かれている「UMSオンコロジークリニック」の略称のようです。オンコロジーとは英語の「oncology」のカタカナ読みでがんの発生機序や治療法を研究する医学の一分野であり「腫瘍学」とも呼ばれています。
この医療機関はUltimate Medical Serendipityの頭文字UMSにオンコロジーをプラスしたクリニックです。です、って言われても困りますが「Ultimate Medical」は究極の医学、「Serendipity」⋯これ一言では言い表せないです、私の英語能力では。まあ、究極の医療を行なっているこのクリニックのサイトを拝見すると、これがまた凄い❗のっけから

◎ガイドラインは重要視しません、とあるではないですか❗

自然免疫療法とか樹状細胞ワクチン療法とか標準医療と実際は標準医療とかけ離れた、一部の医師の間では「トンデモ系」と呼ばれる自由診療を中心にがん治療を行なっているクリニックでさえ、堂々とこんな宣言はしていないです(私の知る範囲での話ね)。

自由診療によるがん治療が高額になることが話題になりますが、命が救えるならいくら払っても、って人もいるので値段でその価値を判断してはいけません、効果で価値判断をするべきですね。

良心的なのか治療の限界なのか?不思議な治療費の料金体系

この4次元ピンポイント治療を行なっているクリニックのサイト(http://www.ums-oc.com/2015/11/20151102001/)に保険診療中止のお知らせが書かれています。まあ、以前は保険診療と自由診療を組み合わせた混合医療を行なっていたことがわかります(詳細不明なので、コメント控えますが混合医療は禁じられています)。

このページによると一年間の治療で300万円を越えると割引になり、上限は500万円と非常にユーザー思いの自由診療によるがん治療クリニックですね、ってワケないです。通常、ピンポイントでがんに放射線を当てるIMRTの場合、例えば前立腺がんの治療期間は2ヶ月程度です。治療間隔が開けば効果が悪くなることも知られています(「Does Treatment Duration Affect Outcome after Radiotherapy for Prostate Cancer?」(Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2008 Dec 1; 72 (5) : 1402–1407)など)。

がんの治療に放射線を使用した場合、上限がありますので多大な回数の治療を繰り返すことは標準医療では有り得ません。ここからは睡眠不足による私の勝手な想像、妄想の域ですから、批判はご遠慮ください。

1:一回のあるいは1クールで治るがんであった → 複数回の治療は必要ない → 300万円を越える場合はまれで、500万なんて滅多にいない

2:放射線治療が奏功しないので複数回治療 → 複数回の治療中にがんやその他の疾患で亡くなった → 実際には500万円を越える患者さんはほとんどいない

などなど考えが4次元空間を漂ってしまうような、究極のがん治療でした。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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