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小林麻央さんが受けた代替医療とは何だったのか?

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代替医療とはそもそのどんな医療なのか?標準医療(一般的な医療であり西洋医学中心)でなければ全く効果が無くて時間の無駄である的な受け止め方をしている方もいますが、それって本当に正しい考え方なんでしょうか?代替医療とはどんなものがあり、効果はあるのか無いのか、いち医師として考えてみます。

小林麻央さんが選択した代替医療とはどのようなものなんでしょうか?

2017年6月22日に小さなお子様を残して亡くなった小林麻央さん。闘病中から乳がんの治療として、標準医療以外に代々医療を選択あるいは併用していたことが週刊誌等によって報道されていました。

2014年2月に人間ドックで乳がんの疑いと診断され、同年10月に乳がんと確定診断されいます。様々な報道がありますが(個人情報ですから、予測記事も多く見受けられます)、2014年10月に乳がんと診断されてから、2015年の一年間の動向が明確になっていません。2016年8月ころから入院をして2016年10月に標準医療による手術(根治的なものかは不明)を受けていますが、2014年から2016年7月頃の間は標準医療ではなく、代替医療を選択していた様子が多くのメディアの報道によって伝わってきます。 画像 国立がん研究センター「乳がん」より 標準医療の場合、病期によって治療法を選択するガイドラインがあり、これに沿って行われるのが標準治療です。

小林麻央さんが亡くなった当初はメディアが大騒ぎしていましたで、彼女に関するブログは控えておりました。騒動も沈静化していると判断して今回ブログにしました。

代替医療はオカルト医療?

「代替医療のトリック」という名著があります。現時点で入手できるのは「代替医療解剖」(新潮社)というタイトルが改変された文庫本です。著者のサイモン・シンとエツァート・エルンストが世界中の代替医療に対して膨大な資料を参考に批判を行っていますが、多くの代替医療がオカルト的なものであると切って捨てています。

代替医療と同じように使用される言葉として「補完医療」とか「補完代替医療」あるいは「民間医療」があります

これらの用語の明確な定義はありませんが、標準医療とは違った医療、と大雑把な考え方で大きな違いはないと考えますが⋯米国の国立補完統合衛生センター(National Center for Complementary and Integrative Health、略してNCCIH)は米国の国立衛生研究所(National Institutes of Health 略してNIH)に属する機関ですがNCCIHはナチュロパシーナチュロパシー・手かざし・ホメオパシー・遠隔気功などのトンデモ系はもちろんのこと、鍼灸マッサージまでを代替医療として監視しています。
「代替医療のトリック」は名著ではあるのですが、鍼やマッサージまで医学的根拠のない治療と判断している点が私としては抵抗感があるんです。

彼らは手かざし治療やタッチセラピーに分類するでしょうけど、たとえば子供が転んだ時に親はぶつけたところをさすりますよね、これってそれなりに効果はあるんじゃないでしょうか(骨折でもしていない限り)、
またおばあちゃんの知恵的な民間療法も多数ありますので、全てを「ニセ医学」「インチキ医学」と判断することに抵抗感があります(別に日よったわけじゃないよ)。西洋医学・標準医療の冷たさが多くのひとをそれこそ「ニセ医学」「インチキ医学」に走らせてしまう一因では、と私は考えています。

小林麻央さんが行ったとされる代替医療の効果は⋯

小林麻央さんが行っていた代替医療として週刊新潮は「気功」「マッサージ」「温浴療法」「サプリメント」「酵素風呂」を挙げています(デイリー新潮 2017年7月6日)。

気功

気功は自分自身の体調を整える効果は否定できませんが、少なくとも第三者に対して行われる「外気功」はニセでありインチキです。

マッサージ

闘病生活で精神的にも体力的にもクタクタになった状態に対するマッサージはリラックスさせる効果はあると考えますが、それによって乳がんが治ることはまず考えられません。

サプリメント

家族としてもご自身としても、がんの治療に少しでも役立つサプリメント(健康食品)を取り入れることを否定はしませんが、残念ながらがん治療に対して明確なエビデンスがあるサプリメント(健康食品)はないといっても間違いではありません。

温浴療法と酵素風呂

私が小林麻央さん関連の報道で非常に気になっていたのが「温浴療法」と「酵素風呂」です。他のメディアでは「水素温熱免疫療法」とも報道されています。 実はこの「水素温熱免疫療法」を行っていたクリニックは、某健康情報サイト(私がこの某健康情報サイトと昨年末から本年春にかけて激しいバトルを繰り返していたことをご存じの方も多いと思われます)で「水素風呂の効果」や「温熱免疫療法の効果」について熱い監修記事を書いていた医師の経営していたところですから、当然サイトの隅々までチェックしておりました。

彼の経営するクリニックの症例写真と称するCTや内視鏡の写真ははっきり言ってインチキでした

たとえばCTの場合は腫瘍が小さく見えるように、別の場所をスライスして「こんなに腫瘍が小さくなりました」、内視鏡の場合は明らかに標準治療で切除した後の写真を「水素温熱免疫療法でがんが消え去りました」なんてやっていました。どんなにお勉強レベルが低い医師であっても、こんな間違いをするわけないので、インチキであることを判ってやっていたインチキ医師と考えていいのでしょうね(そういえば、再生医療に関わる臍帯血の無認可使用で後日逮捕されましたね、この医師)。

効果が無いことを知りながら治療をするインチキ医学

医師のなかにも奇人変人は当然います。精神的な疾患を患っている医師もいる可能性があります。またある宗教にどっぷりはまり込んでしまっている医師もいるでしょう。彼ら彼女らの医療は標準医療・標準治療に基づいている場合もかけはなれている場合もありますが、言動等から危なっかしさが伝わってくることが多く、その医療機関のサイトも独特の雰囲気を醸し出していることが多いです。 現時点で私が一番問題と考えているのは、一見標準医療風を装っていながら、治療内容はニセ医学理論に基づいていて、治療する医師も効果が無いとわかっていながら行われているインチキ医療です

最近、いくつかの週刊誌が自由診療クリニックで行われている「がんに対する免疫治療」の怪しさを暴露していました。がん専門の大手民間自由診療クリニックのサイトを覗いてみると⋯立派な経歴の医師がずらっとならんでいて、その経歴だけ多くのがん患者さんは画期的な治療が行われている最先端の医療機関だと思い込んじゃいます。

小林麻央さんは残念な結果になりましたが、逮捕された医師が経営するクリニックより巨大なエビデンス無きがん治療を行っている、医学界の権威ともいえる医師で構成された医療機関が存在します。これらの巨悪に立ち向かうのが本当のジャーナリズムなんではないでしょうか? ジャーナリストのみなさん、一芸能人の闘病を取り上げるのもがんの怖さを伝えるという意味はあるでしょう。しかし、一般の方が標準医療の治療機会を逸する可能性のあるニセ医学(中にはインチキ医療と呼んでいる医師も多数)をもっともっと報道していただきたいと思います。

あの週刊現代が「がんの免疫療法はインチキだ❗」で医師から大絶賛❗

あの週刊現代が「がんの免疫療法はインチキだ❗」で医師から大絶賛❗

国が承認している保険適応の免疫治療法は3つあります。保険適応でない自由診療におけるがんに対する免疫療法は、標準医療ではありません。がんの免疫療法はインチキとして記事で取り上げられた内容は医師から絶賛されています。免疫療法には、保険適応のものとそうでないものがあるので、その違いを是非とも知っておいていただきたいのです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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