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がん検診で死亡率が減少しない⁉なんで「仕様書」を守らない自治体が多数なの?

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「がん検診は受けるな」「がん検診の大罪」なかには「がん検診は受けてはいけない」なんて感じの一般書籍や週刊誌の記事を良く見かけます。彼らが「がん検診が無意味である」的な主張を強める可能性がある報告がありました。

がん検診を行うにあたって守られるべき手順を順守している市区町村は全国で45%❗それじゃ死亡率減らせない可能性が出てきてしまいます(毎日新聞2017年9月7日)。

がん検診が科学的に効果を発揮させるための「仕様書」、なんで守らないの?

そもそもがん検診は、がんによる死亡者を少なくすること、医療費削減の二つが大きな目標です。胃がん、子宮頚がん、肺がん、乳がん、大腸がんはがんの早期発見することが、その人の命を救うことが可能になることが、日本および多くの国のデータによってわかっています。一方で、見つける必要のないがんもあるため、どんながんでも検診の対象としてしまったら、過剰診断・過剰医療そして医療費高騰を招きかねません。

がん検診を効率よく運用する為に「事業評価のためのがん検診チェックリスト」が作成され、「仕様書に明記すべき必要最低限の精度管理項目」が定められています(国立がん研究センター がん情報サービスより)。

今回の報道はこの「仕様書」に従ってがん検診を行っていた自治体が半数以下だった、ということです。毎日新聞のコメントにあったように

国立がん研究センター検診研究部の斎藤博部長は「がん検診は、がんの疑いがある人を見つけ出し、精密検査を受けてもらうことで初めて成果が期待できる。仕様書の内容が徹底されない検診では十分にがんを見つけられず、がん死亡率を減らせない可能性が高い」と指摘する。
ってことになってしまうのです。

がんは早期発見が一番、早期治療が一番なんだけどね

がんにならない食生活はある程度分かってきています(過剰な塩分、喫煙など)が、それだけでがんの予防になるような単純な話ではありません。

日本で行われている5種類の

がんに対する検診の医療サイドから見た場合の一番の目標は、早期発見です

これらのがんをとにかく症状が出る前に発見する、そして適切な治療をする、それが医療サイドに求めらている使命です。

たとえば大腸がんの場合、がん検診は大便に潜血が混じっていないか?という非常に簡易で患者さんに対して侵襲性の低い検査が行われています(コスト的にもかなり安価)。

画像

結腸がんの場合はステージⅠだと5年生存率は100%、直腸がんの場合でもステージⅠだと5年生存率は97%、がんが筋層を超えて浸潤しているステージⅡであっても直腸がん・結腸がんともに5年生存率は90%以上です(日本対がん協会 http://bit.ly/3RvUIxs)。

このように早期発見によって救われる命は多いことが科学的なデータによってわかっており、さらにデータを蓄積して今後さらなる有効ながん検診をおこなっていこうかと考えていた矢先に、仕様書の内容が徹底されないがん検診が半数以上の自治体で行われていたという大問題が発生していたのです。

体験談 がん検診、これじゃ結果がでないぞ

これは都内某区で実際にあった話です。がん検診の一部をその区では保健所でも行っていました。そこに設置されていたX線撮影装置はボッロボロのポンコツ。さらに撮影する人も公務員意識100%全開の全くやる気のない、仕事をするというより作業をする感じ。その保健所で撮影されたレントゲン写真を医師会が読影する流れでがん検診が行われていましたが、そこで撮影されたレントゲン写真にかなりの数の心霊写真状態のものが混じり込んでいました。

こんな画像じゃ、がんの早期発見なんて無理。医師会のがん検診委員の一人が「保健所での肺がん検診やめさせよう」と提唱したところ保健所でのX線撮影をやめると2名のレントゲン技師さんが失業することになるんだぞ❗お前はもっと政治的に物事を判断しろ~って感じで医師会の某理事に私は人前で怒鳴られてしまいました(某区って目黒区じゃん、怒鳴られたの私じゃん)。万が一、肺がんや胃がんを見逃したら、それこそ大問題になるとの常識的な意見もボチボチでだして、最終的には二人の技師さんが退職するまで、保健所でのがん検診が継続されました。

今回のがん検診の精度を狂わせかねない仕様書を順守しない自治体が多かった理由の一つとして、国がとにかくがん検診の受診者を増やせ、増やせとの数値目標を設定していることも大きな原因になっていることが予想されます。

がん検診受診率〇〇パーセント達成に向けた集中キャンペーン月間、なんてちょっと外部に漏れたら恥ずかしいことが実際に厚生労働省によっておこなわれています(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000024797.pdf)。検診率を上げることは、多くのデータを集積できますし、また受診者にとってもメリットがあるので、積極的に自治体は検診受診者を集めなさい、って指示がでているんですね。

でも、自治体の職員の中には受診率の数値目標ばかりに目が向いてしまっている人も多いのでは?数値達成が至上命令になってしまって、基本中の基本である正しい検査が行われていない可能性も出て来ちゃいます。

がん検診率を上げる方法でこんなのいかが?

メタボリック症候群を予防する、いわゆる「メタボ健診」の受診率が低い企業の健康保険組合に対して、金銭的なペナルティを課す方針を厚生労働省が決めました。私が探した限りではがん検診の受診率が低い自治体に対してのペナルティは検討されていない様子です(水面下ではあるかもしれないけど)。

がん検診の受診率を上げる為に必要なことはペナルティじゃないような気がします。がん検診を受けない理由は内閣府の資料によれば以下の通り。

  • 受ける時間がないから 30.6%
  • 健康状態に自信があり,必要性を感じないから 29.2%
  • 心配なときはいつでも医療機関を受診できるから 23.7%
  • 費用がかかり経済的にも負担になるから 15.9%

受ける時間がない、ってありがちな理由ですが、がん検診の重要性をうまい手段で広報すれば、「時間を作ってでも受診しなきゃ」って思ってくれるはずです。健康状態に自身があり⋯って人はひとまず無視。

受診率アップへの一番の解決策はがん検診を無料化すること

これに尽きると思います。実は自治体によってはがん検診って有料のところがあるの、このブログを書いて初めて知りました。財政難の目黒区でさえ、がん検診って無料なんだから他の自治体もぜひぜひご一考くださいませ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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