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牛乳はモー毒?蘇る「牛乳有害説」⋯でもこれって医学的には否定されているんですけど⋯?

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最近「先生、牛乳って体に悪いんですよね?」と尋ねられることが、なぜか増えてきました。

そういえば数年前、女性芸能人が「牛乳は有害」ということをバラエティ番組で発言して話題になった記憶はあるのですが、ここ数週間でまた同じようは話が健康関連番組かバラエティ番組で出たのでしょうか?そういえばwithneewsが9月上旬に「牛乳」で検索すると検索結果の2番目に「牛乳は超危険」というタイトルのサイトが出ることを報じていたので、それをサラッと読んだかヤフトピにでも転載されて、タイトルだけ読んで牛乳有害説を新たに知ったのでしょうか。

牛乳有害説は医学的に明確に否定されている説なんです。

牛乳有害説なんて過去の話と思っていたら⋯

実は私はwithnewsが牛乳検索結果の件に触れる以前にこんなブログを書いています。

牛乳有害論、言い出しっぺは誰だ??

牛乳有害論、言い出しっぺは誰だ??

がん・糖尿病・骨折などは牛乳を飲まなければならない、肉や乳製品をやめれば健康になるといった説を見たことありませんか?牛乳によって人々は不健康になり、牛乳=健康を推しているのはクスリで儲けている巨大な組織による陰謀といった感じのスケールの大きな話だったりします。そんな牛乳の「気になるウワサ」について検証していますね。

子供向け、あるいは子育て中の母親に牛乳有害説を啓蒙している本があります。

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これはトンデモ系として一部の愛好者には知られた存在である真弓定夫医師が監修している漫画でシリーズ化されています。

注意:牛乳などの乳製品に対してアレルギーがある方の場合は今回のブログは当てはまりません。

真弓定夫医師監修の「牛乳はモー毒」

前掲のブログで触れた新谷弘実医師が書かれた「病気にならない生き方」(サンマーク出版)は2005年7月20日に初版発行されています。一方の真弓定夫医師監修の「牛乳はモー毒」(美健ガイド社)は2014年8月25日に発行されていますので、言い出しっぺは新谷弘実医師、真弓定夫医師はそれを元ネタとして真弓定夫医師お得意の自然流育児の流れの一つとして、漫画という手法で牛乳有害説を布教したものと思われます。

この「牛乳はモー毒」はある母親がスーパーで牛乳を購入しようとしているとこへ、意識高い系風の奥様が「牛乳って体に悪いのよ」と余計なアドバイスをするシーンから始まります。次に学校給食で「私は牛乳は絶対飲みません」ときっぱり先生に宣言するお嬢ちゃまが登場。一般的に栄養が豊富な牛乳と考えていたお友達や先生に「あなたたちは情報を簡単に信じちゃうんだから」とお説教します(どっちが情報に振り回されてんだい?)。研究熱心な今までは牛乳は体に良かったと考えていた親子が訪ねるのが真弓定夫医師がモデルと思われる医師。そこで彼は「牛乳は飲めるけど、ネズミのお乳は飲めないでしょ」と変な理論を持ち出します。

彼らはタイムマシンに乗って昭和10年頃に行くのですが、この時代は牛乳を飲む人はほとんどいないと述べ(これは真っ赤なウソ)、赤ちゃんを母乳だけで育てている場面に出会います(ああ、やっぱりね、母乳神話信者さんですね)。そして今度は戦後にタイムスリップ、給食で牛乳が出るようになり、牛乳の消費量の増加と共に骨粗鬆症が増加している(他の因子多数なんだけど)ことに驚きます。

「母乳神話」母乳で育てると赤ちゃんはもちろん、ママの病気も防ぐ、でも疑問だらけ。

「母乳神話」母乳で育てると赤ちゃんはもちろん、ママの病気も防ぐ、でも疑問だらけ。

母乳で哺育した母親は乳がんのリスクが低下する、母乳で育てた赤ちゃんの方が知能が高くなる可能性といった眉唾な情報がありますが、信じない人が大半とはいえ、一部の母乳こそ至高とする隔たった考えを持った人たちが母乳で育てないママさんは母親失格と決めつけるので医学的にきちんと批判しておきます。

ラクターゼの話等によって、登場人物は「日本人は牛乳のカルシウムが吸収できない」という根拠のない話に納得して現代に帰って来るといった流れになっています。現代に帰って来たかなりトンデモに汚染された彼らに医師がモデルと思われる医師がノルウェーは一番牛乳を飲んでいる国なのに骨粗鬆症の発症率が日本人の5倍なんてヘンテコな説をのたまいます。さらにさらに牛乳を飲み出したのが原因で日本人にがん・脳血管障害・心臓病が増えているとのトンデモ話をしますが、この真弓定夫医師がモデルと思われる医師(他の因子はどうした?)。

最終的には米国が乳業会社を儲けさせるために、牛乳を飲むことを普及させたとの陰謀論でトンデモ話をまとめています。

乳糖不耐症 (ラクターゼ欠乏症lactase deficiency) でも栄養は体内に吸収されます

真弓定夫さんが寒いところに住んでいる人は乳糖不耐症少なく、日本人は温暖な気候で暮らしているので乳糖不耐症の人が多く、それを聞いたあわてんぼうのママが、日本人は牛乳のカルシウムを吸収できない❗との結論を導き出すのですが⋯。

たとえ乳糖不耐症であっても、カルシウムって吸収される場所は十二指腸や空腸ではありませんでしたっけ?(国立健康栄養研究所 健康食品の安全性・有効性情報 話題の食品成分の科学情報 カルシウム解説より)。乳糖不耐症って病気は小腸で吸収さえなかった乳糖が消化の過程で大腸に至って初めて症状として現れます(米国CBSの人気ドラマ「ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則」の主人公の1人ホフスタッター博士も乳糖不耐症でしたね)。

さらに真弓定夫さん(漫画の中では真弓官兵衛先生)はカルシウムを野菜や海藻類、魚から摂取することを推奨しています。確かに重さあたりのカルシウム含有量は牛乳よりある食品は多数存在していますけど、実際に小松菜・切り干し大根・煮干しを大量に毎日食べている人っているのでしょうか、というよりこれだけでお腹いっぱいになっちゃうと思うんですけど。とにかく、先に牛乳有害説ありき、って感じで書かれたトンデモ系母子啓蒙漫画と判断して間違いなさそうです。

牛乳を世界一飲んでいるノルウェーの骨粗鬆症発症率が日本の5倍、一次ソースを提示せよ❗

とにかく牛乳有害説を流布するための話なんで、ノルウェーの骨粗鬆症発症率なんて問題を持ち出して来ていますが、これのっけから間違っています。

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http://www.nyukyou.jp/detail/farming/farming04.html

世界一牛乳を消費している国はフィンランドであり、オーストラリア、イギリスなどが上位で、ノルウェーの人が世界一牛乳を飲んでいる、という話は明らかな間違いまたノルウェーの骨粗鬆症発症率が日本の5倍との話、これも少なくとも医学論文のデータベースでは見当たりません

近いものではノルウェーの股関節骨折状況を調べた「Antipsychotic Drugs and Risk of Hip Fracture in People Aged 60 and Older in Norway」(J Am Geriatr Soc. 2016 Jun;64 (6) :1203-9)がありますが、これは精神神経系の薬を服用した人の股関節骨折を調査したものですし、書かれたのは2016年ですから「牛乳はモー毒?」が参考文献にすることは不可能です。

となると「Milk, dietary calcium, and bone fractures in women: a 12-year prospective study」(Am J Public Health. 1997 Jun;87 (6) :992-7)あたりが一次ソースというか元ネタなんでしょうけど、結論として「大人の女性による牛乳や他の食物源の摂取量が高いほど、股関節または前腕骨折を予防するという仮説を支持していない」となっています。とにかくノルウェーの人が牛乳をたくさん飲むから、骨粗鬆症が日本人の5倍も発症する、との話は裏付けが全くありません。

こんな話が拡散したら乳製品業界は困惑するでしょうね

話は戻りますがwithnewsが報じたように「牛乳」をキーワードとして検索すると、「牛乳有害説」系のサイトが上位を占めているようです。いい加減な話を多数掲載した健康情報サイトが昨年末から社会問題化したため、Google先生もこりゃまずい、と考えたようで検索アルゴリズムに工夫を凝らし始めたようです。

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BuzzFeed より

牛乳業界は大慌てというよりか、困惑していますが、正しい情報、特に健康関連や病気に関してはGoogleは危機感を持って対応してくれているようです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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