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やっべー、今まで風邪の処方を間違って出してたかもしれない(汗)

更新日:

私はなるべく薬の数は少なくなるように処方するよう心がけていました。

例えば抗菌剤を処方する時「私って胃が弱いので胃薬も処方してくれませんか?」とのリクエストに対しても「今までこの抗菌剤で胃の調子が悪くなった人は、ほとんどいないので、万が一胃の調子が悪くなったら次回は処方します」と回答していました。さらに風邪で受診した患者さんにも「解熱剤を飲むと風邪が長引くから処方しませんね」と伝えていたのですが⋯

風邪の時の解熱剤の処方っていいの、悪いの?

風邪の時に解熱剤を処方しても統計学的には罹患期間には差がなかった❗と読み取れる医学論文を見つけてしまいました❗ってことは私が今まで患者さんに伝えていた

鎮痛解熱剤風邪を長引かせる説は間違っていた可能性が出てきて焦りまくり

風邪と鎮痛解熱剤の関係を調べた医学論文はこれ → 「Influence of loxoprofen use on recovery from naturally acquired upper respiratory tract infections: a randomized controlled trial」(Intern Med. 2007;46 (15) :1179-86)、どうも名前を見る限りでは日本人による研究のようです。ヤッベー、と思いながらこの論文を読みました。

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追記 https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/46/15/46_15_1179/_pdf/-char/en からフルテキストダウンロードできるの見つけました(2017年12月3日)。このグラフから読み取れるのは、ロキソプロフェン(ロキソニン)を服用した方が風邪の症状が若干長引くように見えますけど、統計学的には有意差はない、との結論になっています。

鎮痛解熱剤を風邪の時に服用すると風邪が長引く説を検討

風邪って上気道の感染症の総称であり、原因となるウイルスは100種類近いとされています。今回引用させていただいた論文はロキソプロフェン、皆様にロキソニンとしてよく知られている鎮痛解熱剤です。最近はOTCとしても販売されています。

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注意:インフルエンザの時にロキソニンを服用するのはリスキーです。

この論文では上気道感染者174人に対して、ロキソプロフェンを処方しています。プラセボを処方された人は90人です。その結果として「Loxoprofen did not significantly modify the recovery process of URTIs except for a slight tendency to delay」とありますから、上気道炎の症状の回復に対しては有意差ないということになります。

風邪の症状はロキソプロフェンを処方された人の方が長引く傾向があった

と読み取れます。

いくつかのキーワードで検索したところ「解熱剤の使用は風邪を長引かせる」説が多数見られます、それも医師が監修したと思われるサイトで。しかし、今回引用した論文の結論は

解熱剤の使用は風邪を長引かせる傾向はあるが、統計学的には有意差は無かった

です。みなさん、一次ソースを読んでいるのか、少々疑問があります。

困った時はコクラン・レビューでチェック❗

一見差があるように見えて、統計学的な有意差が無い、ってことは医学研究以外でもよくある話です。そこでコクラン共同計画(Cochrane Collaboration)で調べて見ました。コクラン共同計画は世界中の医学論文を集めて、正しい医療情報を伝えるために英国の国民保険サービス(NHS National Health Service)が行なっている大掛かりな調査です。

このコクランの上気道炎に対する鎮痛解熱剤に対する見解はこのように書かれています。

NSAIDs are somewhat effective in relieving the discomfort caused by a cold but there is no clear evidence of their effect in easing respiratory symptoms. The balance of benefit and harms needs to be considered when using NSAIDs for colds.

http://www.cochrane.org/より これをざっくり訳しますと「鎮痛解熱剤は風邪による症状をちょっとだけ抑える効果はあるけど、呼吸器に対する効果は明らかではありません。利益と不利益のバランスを考慮する必要があります」って感じでしょうか。

なんだよ~、風邪が早く治るとか治りが悪いとかの記載無いじゃん

非ステロイド系の鎮痛解熱剤「Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug、略してNSAIDs(日本語読みだとエヌセイズ)と呼ばれています。ロキソプロフェンもNSAIDsですから、コクランレビューを見る限り、鎮痛解熱剤を服用すると風邪が長引くことには触れていません。

結局風邪の時に鎮痛解熱剤を処方するとどうなるの?

話が堂々巡りになってきちゃいました(泣)。一般的には医師の間でも風邪の時に鎮痛解熱剤を処方すると風邪による不快な症状を抑えることは可能だが、風邪に罹患している期間がほんの少し長くなる、と解釈されていると考えます。しかし、2007年というちょっと古い論文では統計学的には有意差なし、との結論になっています。

風邪で喉がメチャクチャ痛い、39度の熱がある(インフルエンザの場合はロキソニンはダメ)、頭がガンガン痛い、こんな症状がある患者さんには副作用に注意しながら鎮痛解熱剤を処方することにした方が無難なようです。これからはコクランに書かれているように「チョットだけ症状を抑えるけど」と言いつつ「日本の研究だとほんの少し風邪が長引く可能性があるよ」ってこれからは説明します。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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