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早く風邪を治したい、注射をお願いします❗って言われても⋯。

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風邪症状で来院された患者さんに時々「先生は風邪ひかないんですかあ?」って質問されます。

もちろん「私だけじゃなくて医師でもみなさんと同じように風邪は引きますよ」って返答すると、「先生、明日どうしても出かけないといけないので、注射でいいから一発で風邪治してください」と言われることがあります(多くの医師が経験していることなんじゃないかな)。

風邪を一発で治す秘密の治療なんて無いよ❗

速攻で風邪を治す方法があれば、それはそれは今の時期に大変助かるのですけど、現実問題としてそんな治療方法はありませんぜ。医師だけが知っている風邪を一発で治す方法、なんてタイトルの記事を書けばそれなりに受けるとは思いますけど、それはありえません。

そんな治療方法があるんだったら、久々に風邪を引いて年末からつい先日まで苦しんでいませんもん、私。

昔は注射一発で風邪を治療したもんだが⋯

私と同年代くらいの人は子供の時に風邪を引いて近所の医院を受診したら、ぶっとい注射をされた記憶がある人多いんじゃないでしょうか?時々いますよね、

昔は風邪を引いたら注射を打ってもらって一発で治ったのになんてボヤくオッサン。あの注射の中身の多くはブドウ糖とビタミン剤だったと思われます。

当時は高熱で苦しんでいる患者さんのために解熱剤の注射を使用していた医師もいるようですが、ショック等の副作用があるために今時の医師で使用する人は滅多にいないと思います(そういえば、ついこの前まで医師会の休日診療所にそんな注射薬常備されていたっけ、爺ちゃん医師のリクエストだったかと)。

長引く風邪によって食欲が無く、水分も足りない、そんな時に点滴とか注射でビタミンを補給することは悪いことではないでしょうけど、風邪を治す、ってことにはなっていないと考えます。

大昔、水虫を治す薬を開発すればノーベル賞ものと言われていましたけど、既に水虫を治す飲み薬も普及していますがノーベル賞は受賞していない模様。同じように風邪を一発で治す薬ができればノーベル賞ものとも言われていた記憶があります⋯でも、現時点では発明されていません。

理由の一つとして風邪症状を引き起こすウイルスの数が多すぎて手に負えない、もう一つの大きな理由として風邪なんて数日で治ることがほとんどだから研究開発する必要性が高くない、ってのが挙げられます。

インフルエンザと風邪って違う病気なの?

インフルエンザは予防接種や特効薬と一般的には考えられている薬があるのに、風邪には予防接種も特効薬もないの、との素朴な疑問が出てくると思います。風邪の症状をもたらす原因の一つがインフルエンザウイルスであり、そのほかにはライノウイルス・新型コロナ感染症ウイルス・アデノウイルスなどが原因の微生物が挙げられます。ウイルス以外では肺炎球菌やマイコプラズマなどが同様に風邪症状を引き起こしますが、90パーセント以上の風邪はウイルスが原因です(ウイルスと細菌は別の生き物に分類されていて、大きく括って微生物と医学的には呼んでいます)。

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国立感染症研究所の2017ー2018年インフルエンザ流行レベルマップ 全国的に警戒レベルになっています。

風邪という病気を厳密に定義すること、これは実はかなり難しい問題で急性的に上気道が微生物の感染によって引き起こされる病気として捉えるしかなさそうです。内科医が参考とする「ハリソン内科学」であろうと、医学生が頼りにする内科の教科書である朝倉書店の「内科学」であろうと、私が理解できる範囲では前述の解釈となっています。

風邪症状になってしまう感染症の中で、特に生命に及ぶ危険性が高いものの一つとしてインフルエンザがあるわけで、これを予防すること、あるいは早期に治療することはそれなりに価値があると考えられたために予防接種が考案され、タミフル等が開発されることになったのです。

ちなみに日本呼吸器学会は風邪症候群に対してこのように述べています。

かぜ症候群はあらゆる年齢層に発症し、健常な人の大半が罹患するごく普通の疾患です

なんと簡潔かつアッサリ。

風邪を早めに治すためには

風邪対策の一番は風邪を予防することです。風邪の原因であるウイルスが自分の体に入り込まないようにするためにマスクを着用している人が多いのですが、マスクの予防効果には疑問があります。一番の予防方法は手洗いであり、それと十分な休息が必要です。私が年末年始に風邪を引いてなかなか治らなかった理由を省みると

  • 年末年始にダラダラとAmazonプライムで映画を見まくって睡眠不足
  • 年末年始に昼間っからビールを飲んでダラダラしていた

なんて感じの「十分な休息」の間違った解釈が挙げられます。あと、これ結構重要だと思うのですが、

  • 鼻水がダラダラと出ていたので、鼻をかみながら鼻をいじくりまわした

これが風邪を長引かせた原因だと考えられます。鼻って外からの異物が上気道に侵入しないバリアの働きをしているのに、鼻についつい指を入れていじくりまわすと病原菌が指に移り、手に拡散したり身の回りにあるスマホやテレビのリモコンに付着して、それを触った手で食べたり飲んだりすると、次から次とウイルスが口の粘膜から体内に侵入してしまいます。

ある幼稚園で他人のマスクと取り違えをしないように「マスクには自分のものとわかるように絵などを描きましょう」との指示が出ているそうです。これってなんだか変な話じゃないでしょうか?マスクを着脱するときに確実にマスクに手を触れるのですから、マスク表面に付着したウイルスを素手でいじることになります。ウイルスがくっ付いた手を口にやってしまうと、感染するリスクが非常に高まるんじゃないでしょうか?もしもマスクで風邪を予防しようと考えているのなら家でマスクを着用したら帰宅するまで外しちゃダメです

これじゃお昼ご飯食べられないけどねえ。。。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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