五本木クリニック院長ブログ

大流行中のB型インフルエンザ関連記事、朝日新聞に電凸しました!!その結果は・・・。


■健康情報記事なんだからエビデンスはあるのか、電凸しました

私は朝日新聞はデジタル版の有料会員です。Yahoo!!ニュースを斜め読みするだけの読者ではないことを前もってお断りしておきますね。昨日、ちょっと気になる記事を見つけたのでこんなブログを書きました。

朝日新聞さま「B型インフルエンザは高熱がでない」はエビデンスがあるのでしょうか?

ちょっと勇み足のタイトルのブログであった点は反省しなくてはなりません。朝日の記事は「高熱出ず気付かぬ例も」であり、B型インフルエンザの特徴が高熱を出さないことである、とは書かれていませんので失礼しました。

しかし、朝日新聞の健康情報に特化した

◎朝日新聞デジタルのアピタル(apital)の見出しは「インフル患者、再び最多更新 高熱出ないB型に注意」

と書かれていました。なぜか現在はタイトルが「インフル患者、再び最多更新 B型で高熱出ない恐れも」に変更されています(https://digital.asahi.com/articles/ASL292VK6L29UBQU004.html)。これもまだヘンです。なぜならA型でも高熱出ない症例がないわけじゃありませんからね。ネット上では「B型インフルエンザ 特徴」とか「今年 インフルエンザ特徴」とかのキーワードで検索すると、B型は熱が出にくいとの記事が目立ちます。

ちなみに私がA型であろうと、B型であろうと症状に変わりはないと主張するエビデンスはこれです。「Clinical Characteristics Are Similar across Type A and B Influenza Virus Infections」(PLoS One. 2015 Sep 1;10(9))。



この表からも

◎症状はウイルスの型によって有意差がないことが明らかです

今、朝日新聞アピタルの見出しが若干変わっていたとしても、巷で伝え聞く「今年のインフルエンザは熱がでないのよね~」が頭の中にあるとしたら

◎B型インフルエンザは高熱がでない、と一般の読者は捉えちゃうのではないでしょうか?

さらに昨日のブログでは書きませんでしたが、こんな医学論文もあります → 「The burden of influenza B: a structured literature review」(Am J Public Health. 2013 Mar;103(3))はB型のインフルエンザの特徴に関連する多くの論文を検討したものですが、この研究でもA型であろうとB型であろうとインフルエンザの型によっての症状に違いがないとの結論に達しています。

今回の朝日新聞の記事のいわんとすることは「症状が強くないインフルエンザもあるから、いつもと違うなあ、と思ったら医療機関を受診してください」であることは十分に理解しています。

でもやっぱり見出しが気になります。そこでB型インフルエンザは高熱が出ない例が多い、あるいは消化器症状が多いとのエビデンスがあるのか、朝日新聞の「新聞記事などに関するご意見・お問い合わせ」に電凸しました。

■健康関連ですから、もちろんエビデンスは・・・

既に紙の記事になっているか否かを確認してもらいました。まだ記事になっていないとのことだったので「これを書かれた担当部署に繋いでいただけますか」とお尋ねしたところ直接は繋げないとの返答。でも、記事一般について伺う部署があるからとのことで、そちらに繋いでいただきました。

自分は都内の開業医であることを事前にお伝えして「B型インフルエンザが高熱がでない場合が多いと読み取れるのですが、それってエビデンスあるんでしょうか」と聞いたところ「医学関連ですから、もちろんエビデンスがなければ記事にしません」といった内容の回答でした。

「あのー、A型とB型では症状に違いはないとのエビデンスはあるのですけど」と伝えると「えー私、この記事書いたものではないので・・・」、一応、伝えておきます的に処理されてしまいました。この意見が記事を書かれた方に伝わったことは確認できるのか、については毎日多数のご意見を賜っていますのでとあっさり返されちまいました(録音したわけではないので、やりとりに若干の違いはあるとは思いますけど、こんな流れであったことは間違いありません)。

電凸後に見出しが変わっているので、担当した記者さんに意向は伝わったのかもしれません。

■「多かったりすることがあるという」という謎のフレーズ

見出しが変わっても記事の内容は同じ。都内の医師の発言として

B型は高熱が出なかったり、下痢など消化器症状が多かったりすることがあるという

と書かれています。電話に出た方も「多かったりすることがある」が高熱が出なかったことにかかる言葉なのか、下痢など消化器症状にかかる言葉なのか、それについて疑問があるんでしょうか的なことをおっしゃっていましたガー

◎消化器症状に直接かかる言葉であったとしても、A型であろうとB型であろうと臨床上の症状に違いはない

とのエビデンスがあるわけです。

また「ことがあるという」という伝聞形も万が一けちをつけられた時に取材相手がそのように言ったんだもん、ってことなんでしょうかねえ。

今後、A型インフルエンザと比較してB型インフルエンザは高熱が有意に出ないし、消化器症状は有意に多いとの疫学論文が出る可能性もあることにはあるんですけど、今現在の医学的コモンセンスではありません。

■取材を受けた医師が言いたかったことはこれだと思います

私は取材を受けた医師の伝えたかったことを忖度だか斟酌してみますと

1:インフルエンザはA型B型どっちでも高熱が出ない場合がある

熱がなくても全身の倦怠感とか呼吸器症状があればインフルエンザも疑われるよ、ってこと。

2:消化器症状が出ることもある

これちょっと説明補足します。たぶん、今の時期はノロウイルスなども流行するので消化器症状があるからといってノロとは限らないよ、って話もしたんじゃないかなあと妄想。乳児やお年寄りは迅速キットでノロウイルス感染を保険で調べられますから(ちょっと忖度だか斟酌だかし過ぎかな)。

3:インフルエンザは重症化することがある怖い感染症

でも、症状がはっきり出ない場合もあるのでだだの風邪だと自己診断しないで、おかしいなと思ったら医療機関を受診しましょう。

これらを伝えたかったはずです。

朝日新聞デジタル版の見出しに過剰に反応した私も反省点はあると思います。でもやっぱり健康に特化したアピタルの見出し「高熱出ないB型に注意」って誰が見てもB型の特徴として高熱がでないことがある、って解釈しちゃうんじゃないでしょうか?もちろん記事全体を読めばあくまでそんな例もあるよ、とわかります。できればA型インフルエンザだって高熱が出ないこともあることを書いて欲しかったです。

■「エビデンス?ねーよそんなもん」が頭にあったからではありません

電凸したとき、先日話題になったというか問題になった朝日新聞の方の「エビデンス?ねーよそんなもん」が頭に残っていたから、エビデンスを教えてくださいと言ったわけではないことは事前に話しておきました。まあ、その時の先方の「あれは冗談ですから」には少々閉口しました。というのも池田信夫さんはアゴラで朝日新聞の影響力について述べています。

高橋純子記者の「エビデンス? ねーよそんなもん」のエビデンス

最近医療系で良い記事が目立つ毎日新聞もやらかしています → インフルエンザ予防接種は効果がありません、という毎日新聞の報道への疑問が満載!!

産経新聞もやっちまっています → 正しい医療情報を得る方法、新聞でさえコレですからかなり難しいかと・・・。

読売新聞ももちろんやってます → 読売新聞「冷え対策」の記事、芳ばしいトンデモ臭が・・・。

朝日新聞、とくに健康医療情報に特化したアピタルは友人・知人も医療記事を寄稿しているので個人的には信頼していました。今回の誤解を招く見出し、そして記事、読解力の問題だけじゃないと思います。

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