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余命告知の問題

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非常に重い問題である余命告知ですが、今年2013年の3月に医師の間で非常に話題になった提訴がありました。新聞の記事のみの情報ですので、正確な判断はできません。

余命告知で治療できず死亡⋯遺族が提訴

新聞の見出しはこのようになっていました。内容は医師から余命告知をされた母親が精神不安定になり、がん治療が受けられない状態になったために死亡してしまった、そのような事態を引き起こした徳島大学病院は遺族に慰謝料などを含めた損害賠償を4500万円を求める提訴をした、というものでした。

医師の90%がこの事例に驚いている

医師のみが参加できるネット上のサイトがあります。匿名性があり、本音を語れるのでなかなか人前では論議されない話題が提供されるのです。もちろん賛否両論が起こり、喧々諤々の論争が引き起こされる時もあります。しかし、なんと今回の損害賠償の件については、90%以上の医師が納得いかない内容の提訴と考えています。つまり、余命宣告はするのが常識である。それで精神的に不安定になったといって治療が継続できなかったことに対して医師側に責任はない、との意見が大多数でした。一部で余命宣告をしたために患者さんが自殺した事があった、と経験を述べていた医師もいました。具体的にどんな状況で余命宣告をしたのか?患者さんの病状はどの様なものであったのか?元々の持病はなかったのか?家族はどんな人たちで家族にはどの様な説明をしたのか、などなど詳細な情報が開示されていない件に対しての討論ですので感情的な意見も目立ちました。

余命とはなんでしょうか?

医師サイドの定義ではなく、皆さんが一般的に情報を仕入れるであろう生命保険での解釈は次のようになっています。

余命というのは似たような症例のデータに基づいた平均値から割り出されます。あくまで平均であり、あなたが余命を宣告されてもそのまんまの期間しか生きることができない、ということではありません。余命はその人の寿命ではありません。

このようになっていることが多いのですが、概ね間違った解釈ではありません。

余命2

しかし、余命を宣告するとなると多くの問題を含むのです

余命宣告の問題点

  • その方の哲学・宗教観が生命自体の定義を左右する
  • 余命宣告をした場合、本人・家族に与える影響が予想できない
  • 余命はあくまでも平均値であり患者さん本人に100パーセントあてはまるわけでない
  • 診療する前に余命宣告を受けるかどうかを確認することは少ないし、本人が希望していても、家族が拒否をする場合がある
  • 余命宣告を受ける患者さん自身が自分で意思決定をできるか(高齢の方の認知症の確認)
  • しっかり治療すれば治る可能性がある人が精神的に参ってしまって生きる力を失わないか

余命1

余命宣告についてのまとめ

多くの医師の意見

病状の見込みを伝えないで、だましだまし治療を続けることは正しい医療なのか。治療を受けることを説得するのは家族の働きかけも必要なのではないか。

私の意見

患者さんに言われたことがあります。

「先生、こんな末期のがんになっているのに気付かなかったけど、死ぬための用意をする時間が取れて良かったよ」

私はすぐに内容が理解できなかったのですが、患者さんの説明によると、人間は皆家族にも知られたくないことがあるものなので、死ぬまで入院し続けると自分が家族に見せたくないものを処分する時間が取れないでしょ。

なるほどと頷いてしまいました。

何も遺産等の金銭的な問題以外には家族に秘密にしてるものや死ぬ前に会っておきたい昔の恋人なんてものもあるのではないでしょうか?死ぬ前に心の準備以外に自分の人生の整理をするための時間は必要です。

つまり余命宣告は必要と考えます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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