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10歳代で妊娠すると32%も肥満リスクが上昇する、という論文の陰に隠れた政治的なメッセージ

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出産が切っ掛けで肥満がちになった女性は多いと思います。

出産前の体型に戻るには若い人ほど苦労するなんてことも囁かれていました。

そんな傾向を調べた、面白い論文を見つけましたのでご紹介します。

出産すると体型が崩れるといわれているけど

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http://ajog.org/

実はこのようなデータがシッカリと調査されたのは初めて

有りそうで無かった論文が若年層の妊娠と肥満の関係を調べた論文です。その為、アメリカではかなり反響があった様子です。American Journal of Obstetrics & Gynecologyに「Implications of teen birth for overweight and obesity in adulthood」という題名で掲載されていました。(American Journal of Obstetrics & Gynecology Volume 209, Issue 2 , Pages 110.e1-110.e7, August 2013)

日本語に訳すと「10歳代の出産は成人して肥満へ影響」といったところでしょうか。

10歳代の妊娠は少し減ってきているアメリカ

アメリカは十歳代の妊娠率が先進国のなかでも高いことが知られています。原因としては人種・生活環境・教育レベルなど様々な因子が絡み合ってそのような結果となっています。

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http://www.thenationalcampaign.org/

ここ20年くらいは減少傾向ではありますが、若い人の妊娠・出産は育児や家事、その後の教育、経済的問題などにおいて様々な障害が出ています。

その人の為にならないという考え方もありますが、結局はアメリカの国家予算にとってあまり望ましいことではないと保守的な人々は考えています。そこでこの論文です。

国がまとめた調査結果を分析

調査方法は
National Health and Nutrition Examination Survey (略してNHANES) 、全米国健康栄養調査というデータベースがありそこから出産を経験した女性をピックアップしました。

10歳代で出産した人と20歳代で出産した人のその後の肥満率を比較しました。総数4800万人!の中から今回の調査の条件を満たした5220人について解析しました。

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結果

10歳代で出産した人は20歳代で出産した人より肥満の割合が32%高かった

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明らかに10歳代で妊娠すると肥満傾向が!上記論文より引用

バイアスが掛からない様に、人種や教育レベル、生活環境の因子は調整したのち比較したデータとのことです。

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提示されてデータの一部ですが、人種や教育レベルなどの因子を考慮しても上記の結果がでましたよ、と論文ではなっています。

とにかく若い人は出産するな!と強引なコメント

論文を書いた人はこんなことを言っています

第一段 階肥満は健康に対して大問題である。
⇒10歳代で出産すると肥満になる傾向がこの調査で判明した。
⇒だからケアが必要である。

ここまでは良いのですが、さらに

第二段階 10歳代での出産は低体重児を生むリスクが上昇する
⇒出産によって高校を卒業できなくなる(アメリカは高校は義務教育です)
⇒さらに10歳代の出産は長期的にみて不健康である

さらにさらに

第三段階 肥満を治療することはお金がかかる
⇒だから早い段階で高リスク群を見つけ、改善しなければならない

つまり10歳代の出産は国にとって非常に負担になるので、あまり若いうちに出産しない様に国側が対策を取らなければいけませんよ、ということを言っています。

この論文をもっともらしい結論に導いていますが、その裏にはアメリカの複雑な事情が絡んでいるのです。

この結果を導いた裏には政治的な主張がある?

上記のような考え方は国の予算のほかに宗教を背景にした、「性のモラル」の問題が控えています。

アメリカでは「結婚までは性交渉は控えるように」というabstinence-only education(禁欲)派と「避妊法も教えよう」というcomprehensive sex education(包括的性教育)派が議論を繰り返していました。

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超タカ派保守系政治家と言われていますが、近況はあまり報道されませんね。

「性交渉控える」派は共和党右派と考えればいいと思います。共和党右派の大票田は保守的な宗教派閥であることはご存じだと思います。

しかし、2008年共和党の副大統領候補だったサラペイリンは娘が高校生なのに出産していて信用を失った出来事がありました。それによってサラペイリンの選挙戦略がかなりのダメージを受けたと言われています。

今回の論文も既存データをいじくりまわして、「若いうちに妊娠すると太りますよ!」という若い女性の心に響く肥満問題から、禁欲教育や性教育の問題まで意識したかなり政治的な意味合いを含んだこの論文です。

ちなみにこの論文の主筆者Tammy Chang医師はこんな人です。

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主張が同じなら個人的にはサラペイリンより彼女に一票いれます、私。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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