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インフルエンザ予防接種の時期になりました。大騒ぎした中国で発生した鳥インフルエンザA(H7N9) のその後

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ここのところ中国発信の医学論文が英文になって世界的な医学雑誌に掲載されるようになり、時代もかわったなあとオッサン的感慨にふけっている今日この頃です。パンデミックの危険と、大騒ぎした「鳥インフルエンザ」ですが、結局どうなったかを報道したマスメディアはあまり見かけません。

最近は中国も医学系の情報は出てくるようになりました

以前「鳥インフルエンザ対策 まずは敵を知ろう!」というブログを書きましたが、その後が気になっておりました。

鳥インフルエンザ対策はまず敵を知ること!

鳥インフルエンザ対策はまず敵を知ること!

喉元過ぎれば的に過ごしては感染症は一気に世界中を駆けめぐりパンデミックとなりますので、中国発生の鳥インフルエンザの事件についてまとめた論文がないか探したところ、有りました❗有りました。

しっかりと英文の論文となっていましたので今年も季節性インフルエンザ予防接種の季節になってきましたので世界を騒がせた鳥インフルエンザはどのような経緯で感染が広まり死亡者がでたのかを説明・解説しますね。

論文はBMJ (Clinical research ed.) . 2013;347;f4752. doi: 10.1136/bmj.f4752.で登録してある「Probable person to person transmission of novel avian influenza A (H7N9) virus in Eastern China, 2013: epidemiological investigation.」という物です。著者はXian Qi, Yan-Hua Qian, Chang-Jun Bao, Xi-Ling Guo, Lun-Biao Cui, Fen-Yang Tangらになっているので中国の医療関係者がイギリス医師会雑誌 (British Medical Journal) に英文で発表したということです。

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怖い話なので結論からお伝えします

結論として「人間間の感染は限定的には起こっていたが、非連続であった」ということです。簡単に言えば鳥から人に移ったインフルエンザA(H7N9) ですが、遺伝子構造を変化させることによって人間から人間に移っていたのは事実だけど、通常のインフルエンザの様に次から次へと移るような特性は持ち合せなかったということです。現時点では中国で終結したと考えられますが、もちろん厳重な警戒は必要です⋯中国で発生したらすぐに世界中にインフォメーションするという意味です。

どうやって中国で人から人に感染が広がったのか?

中国の鳥インフルエンザA(H7N9)は2013年6月末の時点で感染確定した人が133人、そのうち43人が死亡しています。死亡率としては約三分の一となりかなり危険なウイルス感染症でした。

感染した人は実はほとんどの人が鳥と接触することの多い人でした。つまり家で鳥を飼育しているとか、市場で鳥を販売しているとか、鳥市場に出入りをしている人だったのです。

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ここまでは鳥から人にインフルエンザが感染した、ということにしかなりません。鳥との接触を無くせばパンデミックは起こらなくなります。しかし、この鳥インフルザ事件で問題になったのは人から人へ移る性質をA型インフルエンザのうちH7N9が獲得したかもしれないということです。人から人へ感染すると季節性のインフルエンザのように世界的に大流行してしまいます。

この遺伝子系のインフルエンザは人類は今まで経験したことがないために、抗体を持っている可能性は無いのです⋯ということは発症すると命を左右してしまうような事態に発展してしまいます。今回の中国を見てください、133人が感染して43人が死亡しているのです。

人から人へ感染したと思われる症例

父親から娘に移った例が挙げられています。お父さん(60歳)は鳥を販売する市場に出入りしている人でした(職業不明)。ある日いつものように鳥市場に行ったあとで5-6日後に高熱が出ました。

そして2013年3月11日に病院に入院後、集中治療室に搬送されましたが、症状が悪化してなぜか他の病院に転院させられその病院の集中治療室で5月4日に亡くなりました。なぜ集中治療室(ICU)から他の病院のICUに移されたのか謎ですが、中国だからそのようなこともあるんだ、としておきましょう。

次にこのお父さんの32歳の娘さんがお父さんが発症してから10日くらいの間、親孝行で看病に専念していました。この娘さんは鳥市場に行ったことは無かったそうです。父親おもいのこの娘さんは食事の介助から排泄物の始末まで行っていたそうです。

しかし、この娘さんも体調を崩して3月24日に入院する目にあってしまいました。お父さんと同じようにICUに運ばれて、お父さんより早い4月24日に多臓器不全で亡くなってしまったのです。お父さんと娘さんの体から検出されたインフルエンザAは遺伝子が同じものだったため、お父さんから娘さんに鳥インフルエンザが移ったと証明されたのです。

つまり鳥インフルエンザA(H7N9) は鳥から人へ感染するだけでなく、遺伝子構造を変化させ人から人へ移る能力を獲得していたのです。さらにこの親子と摂食した可能性のある親戚・友人の検査を行ったところ、娘婿に軽度の症状があらわれていたのですが、その他の人はインフルエンザ感染検査の結果はマイナスでした。よくよく調べてみたところこの妻思いで、義父思いの娘婿は最初に感染したお父さんの面倒を手伝っていたことが判明しました。

感染源のお父さんは娘と娘婿にインフルエンザを移していましたが、それ以外の人には移っていなかったのです。つまり、食事の世話から排泄物のお世話まで行った人には感染したのですが、接触しただけの人には感染しなかったという考え方が成り立ちます。

そこで導き出された結果が「インフルエンザA(H7N9) いわゆる鳥インフルエンザは人から人に感染する可能性はあるが、ウイルスにとっては効率よく、さらに持続的に感染を拡大させる能力はない」と判断されました。

季節性のインフルエンザはどうすればいいのか?

鳥インフルエンザ騒動は前述の結果となりましたが、これから予防接種を行う予定の方は通常のインフルエンザ注射はどの様にすればいいでしょうか?予防接種は効果が無い、副作用が強い、金儲け主義だ等の意見もありますが、金儲け主義だという意見に対しては実際は儲からないということを「予防接種のワクチンをビジネスとして捉えてみました 果たして儲かるか?」で論じています。現時点での日本におけるインフルエンザ予防接種は感染の拡大を抑えるという意味では効果を発揮しています。それは今年大流行した「風疹ワクチン」も同じことです。

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子供に移したら可哀そうすぎます
「俺は風邪はひかないし、引いても自分で治すぜ」なんて言っているオッサンも多いのですが、オッサンが中国のお父さんのように周囲にインフルエンザウイルスをまき散らしているかもしれません。インフルエンザの予防接種は自分を守るためでもありますが、周囲に迷惑を掛けない為の社会生活上のマナーと考えていただければ幸いに存じます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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