ドクター松下ブログ

肝斑(かんぱん)って何?その正体と撃退法


■肝斑とシミの関係

肌に茶色っぽいものができると一般に「シミ」ができたと言います。

「あなたのそのシミ、肝斑では?」というテレビ・コマーシャルの影響もあってか、「私のシミは肝斑じゃないですか?」といって来院される方が、たくさんいらっしゃいます。

「肝斑」という言葉だけがひとり歩きし、よくわからずに、「肝斑」という単語を使い、シミのようなものができると、なんとなく「肝斑」ではないかと思っている方が多いようです。

 

シミのことを専門用語で「肝斑」というのか?または、シミが何かの拍子に変化して「肝斑」というものに変わるのか?肝臓が悪いと「肝斑」ができるのか?など、いろいろ疑問点があると思います。

そこで、今日は「肝斑」に焦点を絞って、わかりやすく、徹底的に解説していきたいと思います。

 

簡単に言うと、顔のシミには6種類あり、その中の1種類が「肝斑」なのです。

その6種類のシミが、以下の(1)~(6)です。

(1)老人性色素班

(2)脂漏性角化症(老人性のイボ)

(3)肝班

(4)ソバカス

(5)ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)

(6)炎症性色素沈着

 

一般的にシミと言ってイメージする、茶色い平坦な輪郭のはっきりした色素斑が、(1)の老人性色斑です。

イボのように盛り上がって出てくるシミは(2)の脂漏性角化症です。

(3)の肝斑は、後ほど詳しく解説します。

(4)のソバカスは、子どもの頃から見られることが多く、鼻や頬に細かく散らばるようにでるシミです。

(5)のADMは、根が深く、シミというよりアザに近いもので、両頬上部に左右対称に出た、灰色や青みがかった茶褐色のシミです。

(6)の炎症性色素沈着はニキビや吹き出物のあとや傷あとなどが茶色くシミになって残ったものです。

しみの治療がやっかいな点は、種類が多い上に、それぞれの種類に合わせて適切な治療法を選択しないと、効果がないどころか、かえって悪化させてしまうこともあることです。

また、6種類あるシミのうち、数種類が同じ部位に出ることも多く、肝斑の上に老人性色素班や脂漏性角化症などが重なっている場合には、治療の順番や組み合わせを慎重に選ばないと、きれいに改善していかないのです。

 

■肝斑の特徴

(1)男女比:圧倒的に女性に多いシミです。男女比は、1:14との報告があります。

(2)年齢:30~40歳代が多いです。高齢になってから肝斑がでてくることはまずありません。

(3)発生部位:ほほ骨の部分、おでこ、口周り

(4)発生しない部位:髪の毛の生えぎわや眉毛のまわり、目の周りには肝斑はできないので、その部分が白くぬけたように見えることがあります。

(5)形:様々な形がありますが、もやもやした境界のはっきりしないシミで、左右対称性にでます。ちなみに、肝斑という名前は、臓の形に似た色素ができることに由来しています。肝臓病とは無関係です。

(6)大きさ:様々な大きさがあり、小指の先くらいの小さいものから、手の甲くらいもある広範囲なものまでいろいろです。

(7)色:茶色~こげ茶色

(8)その他の特徴:うすくなったり濃くなったり、症状に変動がみられることが特徴です。

(9)肝斑に似た他のシミ:ADM、炎症性色素沈着、扁平母斑(茶あざ)など、よく似たまぎらわしいシミがあるので、確実に見極めないと、治療方法が異なります。

 

以上の特徴を端的にまとめ、肝斑の典型例をあげるとこのようになります。

(出典:http://ritaspeaks.com/tag/melasma/)

30~40代の女性で、ほほ骨の上に出てくる、もやっとした左右対称のシミで、下まぶたの部分は白く抜けています。

 

いずれにしても、自己流でシミの種類を見分けることは困難ですし、シミのように見えても皮膚がんということもあり得るので、医療機関を受診し、専門の医師に、悪性の疑いはないか、どのタイプのシミかを診断してもらい、それぞれのシミに最適な方法を選択して治療するのがベストの方法です。

 

■肝斑の原因

医学が進歩した現代においても、肝斑の根本原因はわかっていません。いろいろな説が唱えられていますが、確たる証拠がなく、原因不明というしかありません。ただ、肝斑を悪化させる要因はわかっています。

 

■肝斑を悪化させる要因

(1)女性ホルモン

妊娠中や経口避妊薬を服用している人に肝斑ができやすく、また、生理の周期によって、肝斑が濃くなったり薄くなったりすること、さらに閉経後に徐々に改善することから、女性ホルモンが肝斑に関係していると考えられています。

(2)紫外線

紫外線は肝斑の直接の原因ではありませんが、長期間浴び続けることによって、肝斑発症の誘因になりますし、肝斑を悪化させる要因でもあります。

(3)乾燥

肌が乾燥すると、皮膚のバリア機能が破壊され、それが肝斑を悪化させる要因になります。

(4)摩擦

洗顔やメイク、クレンジング、マッサージなどの際に、ごしごし肌をこすりすぎるとそれが原因で、皮膚のバリア機能が破壊され、肝斑を悪化させる要因になります。

(5)ストレス

ストレスによって生理の周期が乱れたり、ホルモンのバランスが崩れると、肝斑が悪化することがあります。

 

■肝斑の治療法

肝斑の根本原因がわかっていませんから、根本治療はありません。

まずは、上の項目で挙げた、肝斑を悪化させる要因を取り除くことが大前提です。その上で、さらに以下の治療を進めていきます。

(1)内服薬

最もポピュラーで手軽な治療法は、トラネキサム酸(トランサミン)という飲み薬です。どのような機序で効果が出るのかは諸説ありますが、まだはっきりと解明されていません。しかし、経験上この薬が肝斑に有効であることは事実で、第一選択の治療法です。

飲む量は250mgの錠剤を1日3回、毎食後に1錠ずつ飲んでいただきます。まず3か月飲んでいただき、効果がまったくない場合は、いったん中止します。効果が実感できればさらに継続し、満足のいくところまで改善したら、突然服用をやめるのではなく、徐々に飲む量を減らしながら中止します。突然服用をやめると、反動で肝斑がぶり返すことがあるのです。

トラネキサム酸は止血薬としても使われる薬で、血液を固まりやすくする作用があるので、血中コレステロールが高い方や動脈硬化がある方、脳梗塞や心筋梗塞など血管がつまる病気のある方は使えません。また、他の病気の治療で、すでに別の止血剤を飲んでいる方が、トラネキサム酸も一緒に飲むと、血管がつまってしまう危険性があるので注意が必要です。

さらに美白効果を高めるために、トラネキサム酸に加え、ビタミンCもあわせて飲んでいただきます。

(2)外用薬

肌に塗る美白剤としては、アルブチン、エラグ酸、コウジ酸、プラサンタエキスなどいろいろありますが、最も強力な美白作用を示すのがハイドロキノンです。ハイドロキノンは濃度が高くなると肌への刺激が強くなるので、当院では刺激の少ない5%のものを使用しています。

クリニックによっては、肌の新陳代謝(ターンオーバー)を促進させるトレチノイン(ビタミンA誘導体)をハイドロキノンと併用する療法をおこなっているところがありますが、トレチノインは皮膚の刺激症状を起こす頻度が高く、かえって肝斑が悪化したり、色素沈着を起こすリスクがあるため、当院では使用していません。

(3)ケミカルピーリング

ケミカルピーリングにより、古い角質を除去することで肌のターンオーバーが促進し、表皮中のメラニンの量を減少させる効果があります。しかし、やりすぎてしまうと、かえってバリア機能が破壊され肝斑が悪化することがあるので、ピーリング剤の種類や濃度、治療間隔の選択を慎重に行う必要があります。

(4)イオン導入、超音波導入(エレクトロポレーション)

皮膚には強力なバリア機能があり、皮膚の表面に美白剤を塗っただけではなかなか効率よく浸透しません。そこで、電気の力や超音波の作用を利用して、強制的に美白成分を皮膚内部に浸透させる治療が、イオン導入と超音波導入です。当院では、特に肝斑に効果のあるトラネキサム酸やビタミンCをこの方法で導入しています。

(5)レーザートーニング

通常、老人性色素斑や脂漏性角化症などのシミは、強めのレーザーを当て、カサブタを作って取る方法が一般的です。肝斑で同じ方法をおこなうと、いったんはとれますが、すぐに再発してしまい、さらに元より濃いシミになってしまうことがあるので、強いレーザー治療は禁忌とされています。

そこで、肝斑の場合は、カサブタができないくらいの弱い出力でQ‐YAGレーザーを当てるレーザートーニングという方法を用います。1~2週間おきに、5~10回程繰り返すことで、マイルドにメラニン色素を分解していきます。この治療もやりすぎると、かえって肝斑が濃くなったり、逆に色が抜けすぎてまだら状に白くなることがあるので、注意が必要です。

肝斑はいまだその根本原因がわかっていないので、根本治療もなく、経験的に効果が認められている治療を肌質や肝斑の状態に合わせ、いろいろ組み合わせながら治療します。それぞれの治療による反応をみながら、体質に合う治療合わない治療を見極め、軌道修正しながら治療を進めていきます。

 

■なかなか治らない難治性の肝斑に対する新治療

6種類のシミの中で最も治療が難しいのが肝斑です。

治療をしてせっかく良くなっても、またしばらくして再発して出てくることがあります。また、上で説明した治療をすべておこなってもなかなか効果のみられないこともあります。また、まれに悪化してしまったり、白く抜けすぎて白斑のようになってしまうこともあり、とても苦労することがあります。

そんな難治性の肝斑に効果のある新しい治療法が最近の研究で出てきました。

ロングパルスYAGレーザーによる治療です。

このレーザーは、本来、脱毛、毛細血管拡張症、血管腫、傷あと、お肌の若返り(肌質・毛穴改善効果)に対して使用するレーザーですが、難治性の肝斑にも効果があることがわかったのです。

いろいろな治療をしてもなかなか良くならない肝斑でお悩みの方は、ロングパルスYAGレーザー治療がおすすめです。

 

肝斑を治療するうえで最も重要なことは、専門の医療機関で肝斑かどうか、確実に診断をしてもらい、最適な治療法を選択することです。

 

 

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