fbpx

イボに効く、というヨクイニン。肌荒れにも効果あり、という話はウソ?!本当⁉

更新日:

イボ取りは、液体窒素による痛いイボ治療が一般的です。痛みや痕を残さないようにイボを取るにるにCO2レーザー治療で取り除くのがよいのですが、そうはいっても⋯気が引けてしまう方も多いでしょう。服用するだけでイボに効くクスリがあると聞いたら誰もが試してみたいと思うはずです。イボに効くとされているヨクイニンという漢方薬についての医師が解説します。

ヨクイニンの効果とは?

ヨクイニン、漢字で書くと「薏苡仁」という漢方薬です。ヨクイニンは保険治療で使用することができる処方薬です。

ヨクイニンがイボを治す、というか消す効果があると巷で囁かれていますし、医師でも「とりあえず処方しとこうか」的にヨクイニンと処方箋に書き込むこともあるようです。

画像

イボを治療するために多くの医療機関では液体窒素による複数回にわたる痛いイボ治療を行います。もし、飲む薬であるヨクイニンが本当にイボに効くのであれば第一選択薬としてもっと処方されても良さそうなものです。実は保険治療ではヨクイニンの適応症は扁平疣贅と尋常性疣贅だけであり、一般の方が「イボ」と表現する場合、上記の2つの病態ではないことが実際は多いのです。

果たしてヨクイニンがイボに効果がある、さらには美肌効果がある、という医学的な裏付けはあるのでしょうか?⋯残念ながらありませんでした。涙

Photo_TP072_jpg__600×466_

処方薬として保険診療適応の製剤もあります。

追記 「ヨクイニン」で検索してこのブログをご覧の方も多いかと思われます。決まった時間に訪問される方が多く不思議に思っていました。 また尋常性疣贅(ウイルス性のイボ)の治療に関して「ヨクイニンって効くんですか?」とのご質問を診療時に受けることが多くなっています。

その疑問、やっと解決しました。新日本製薬という通販主体の製薬会社が「ヨクイニン錠SH」という商品のテレビCMが流れていることが原因のようです。ヨクイニンSHをお買いになる方が「ヨクイニン」で検索した場合はこのブログは邪魔ですね(笑)。でも中には「本当にヨクイニンって効果あるの」と考えて検索した方には有用な記事と考えております。(2016年5月29日)

そもそもヨクイニンが効果がある、って宣伝しているイボはイボじゃない??

イボという言葉は医学用語だと「疣贅(ゆうぜい)」になります。この場合のイボである疣贅はほとんどの場合、原因はウイルスです。ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus)が正式名で、あの子宮頸がんの原因であるともいわれているウイルスもこの仲間です。イボの原因ウイルスであるヒトパピローマウイルスは遺伝子の構造上100種類以上が知られていて、何種類かがいわゆるイボの原因になっています。もしヨクイニンがイボに効果があるのなら、特定のウイルスを殺す働きがあるはずです。新聞広告やネット上の広告で体の内側からイボを治す的にヨクイニンを主成分とした医薬品、あるいはヨクイニンを主成分とするハトムギのエキスやハトムギ茶を見かけます。それらの広告に「これがイボだ❗」って感じで出ている症例写真?の多くは残念ながら医学的に言うところの「尋常性疣贅」ではなく、単なる「老人性のイボ」である場合が多いのです。この老人性のイボは「脂漏性角化症」「老人性角化症」と呼ばれ、長年紫外線を浴びた肌が黒くなって盛り上がり、イボ状になった症状です。確かに一般的には「イボ」と表現しても間違いはありませんが、医薬品を扱う会社が老化によってできてしまう老人性角化症・脂漏性角化症を「長い間悩んでいるイボ」の治療にぜひヨクイニンの内服薬を、という表現をとるのはいかがなものでしょうか?

ウイルス性イボに関しては、後日このような体験をしました。

漢方薬「ヨクイニン」、イボには予想以上に効果があったけど副作用も出ちゃった。

漢方薬「ヨクイニン」、イボには予想以上に効果があったけど副作用も出ちゃった。

保険処方される漢方薬にヨクイニンというクスリがあり、イボの治療で処方されます。漢方薬だから副作用が無いと勘違いする人が多いのですが漢方薬にも副作用はあり、ヨクイニンにも副作用はあります。実際に医師がヨクイニンで体験した副作用と、イボ以外でも効果があるのかについて解説します。

お読みいただけるとうれしいです。

よく見かける首にできるボツボツはウイルス性のイボではなく、単なる老化でできるskin tagとかアクロコルドンと呼ばれる皮膚の症状です。これなんかはヨクイニンでじっくり時間をかけて治療するよりレーザーで簡単に取れるんですけど(関連エントリー 首のポツポツ、ブツブツの取り方はレーザーで❗痛くなく治療ができます)。

ヨクイニンがなんでイボに効くのか?⋯わかりません❗

確かに臨床の場でイボにヨクイニンが処方されています。しかし、なんでヨクイニンがウイルス性のイボに効果があるのか明確な理論や明確な作用機序はわかっていないのが現状です。「でも、私はヨクイニンの長年飲んで、イボが綺麗になった」という患者さんがいることも間違いありません。実はヒトパピローマウイルスが原因となった「尋常性疣贅」って自然に治る場合もかなりの頻度で起こってきます。

100種類以上もあるパピローマウイルスは感染力が強いものも弱いものもいますので、同じようにウイルスに接触しても、移ってイボができてしまう人とできない人がいます。免疫力が落ちている状態であり、皮膚に細かい傷があるとイボは移りやすいと考えて間違いありません。多くのイボは手や足などの露出した部分にでき、感染経路としては特にプールや入浴が考えられます。プールの周りってコンクリリート打ちっぱなしやギザギザが残っている状態のことが多いので、水でふやけた足で歩き回ると目には見えない範囲であっても傷がつき、肌のバリアが壊れた状態になります。そのコンクリートやタイルにイボに感染している人から尋常性疣贅の原因であるヒトパピローマウイルスがばら撒かれていて、手足についた傷から容易に侵入して感染してしまうのです。

子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルスでさえ、自然治癒することが知られていますので、生命を左右しないレベルの影響力であり、感染力もそれほど強くない手足に侵入するヒトパピローマウイルスが自然治癒することは大いに考えられることなんですね。ということは「体に優しく効果を発揮するヨクイニン」でイボが治ったのか、それとも「自然治癒」してしまったのか?両者を判別するには二重盲検と呼ばれる治験を経てからヨクイニンの効果を実証しないとなりません。

薬価収載されて保険診療で処方することが可能な漢方薬なかでも、実は多くがスタンダード治療に使用される薬物(普通の薬)のように治験をしないで保険適用となっています。漢方薬のなかで医学的効果がエビデンスで明らかになっているものは極々少数なんです。つまりイボに本当にヨクイニンが効いているのか不明であり、作用機序はさらに不明ということがヨクイニンやヨクイニンが主成分であるハトムギ、ってことになります。

スタンダードな化学成分で構成される薬を異常に嫌う人が好んで選択する傾向のある漢方薬ですが、作用機序がよくわかっていないものをなんで選択するのか、結構不思議な一面もあります。

ヨクイニンの効果をおばあちゃんの知恵的に善意に解釈すると⋯。

昔からの言い伝えである民間治療のなかでも、現代医学の効果に匹敵するものもあります。では、ヨクイニンのイボに対する治療効果をおばあちゃんの知恵的に無理やり解釈してみます。ネットで調べるとヨクイニンの効果は「コイクノライド(Coixenolide )」という成分である、とされています。このコイクノライドを取り上げた医学的な論文も幾つかありますが、ほとんどが中国系の研究者によって書かれたものであまりアカデミックではないと感じています。

でも、実際にヨクイニンを飲んだり、ハトムギ茶を飲んでイボが治った、という人もいます。ヨクイニンはハトムギから抽出された成分であり、ビタミンB群が多く含まれています。ビタミンBは肌から余分に出てしまう皮脂の分泌をコントロールしますし、補酵素として働いて皮膚の再生・成長・維持という重要な働きをしています。つまり、健康な肌を維持するにはビタミンBは有効である、とは言い切れるのです。ハトムギ茶を常用して美肌を維持している人の肌は当然イボはないでしょうし、老人性角化症によるシミもないので、ハトムギ茶を常用している人の肌は綺麗と考えらえます。

ここで気をつけないといけないのはヨクイニンを含むハトムギ茶を常用している人の肌が綺麗である、ということと、肌を綺麗にするためにはヨクイニンを含むハトムギ茶が有効である、という話は別です。

ヨクイニンが美肌の原因であるから、美肌を阻害している「イボ」もヨクイニンで改善する⋯と昔の人が考えたことがそのままおばあちゃんの知恵的に伝承され、それをエキスとかサプリとか医薬品とかにして「飲んでイボに効く」という表現になっているじゃないかな、と考えています。

ヨクイニンが実際にイボに効果があることを支持する二重盲検等のしっかりした条件下の論文を探しているんですけど⋯残念ながらまだ見つけることができません。

こんなのはいかがでしょうか?

花粉症にもインフルエンザにも効果がある「葛根湯(かっこんとう)」⋯エビデンスはあるの??

花粉症にもインフルエンザにも効果がある「葛根湯(かっこんとう)」⋯エビデンスはあるの??

葛根湯って体調悪くなったらとりあえず飲んでおけばなんとかなるかもという謎の安心感をお持ちの方が多い漢方薬です。効果あるから売れてるし人気あるって思いがちですけど果たして本当に効果はあるのでしょうか?風邪だけでなく花粉症やインフルエンザにも効果あるのかどうか医師が考察してみました。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

Affiliated Medical Institutions

主な提携医療機関

一般診療
診療日
月・火・水・金
9:30~12:30/15:00~18:30

土 9:30~12:30
休診日
木・日・祝
受付時間
9:00〜12:15/14:30〜18:15

泌尿器科・内科・発熱外来

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7000

美容診療
診療日
月・火・水・木・金・土
10:00~18:30

※完全予約制です。ご予約はお電話ください。
休診日
日・祝
受付時間
10:00〜18:30

美容外科・美容皮膚科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7015

© 2023 医療法人社団 萌隆会 五本木クリニック